今回は推定・検定の前段階として「母集団」と「標本」について説明していきます。
例えばいま、新薬を投与した患者についての新薬の効果に関するデータが手元にあり、これから病気に対する新薬は本当に有効なのかを知りたいとします。
このとき母集団となる患者は、今現在は限られていますが、過去にも現在にも存在するという意味では無限であるため、真の新薬の効能を知るためには標本をもとに推測せざるを得ません。
といった感じで統計学においては、母集団から抽出された標本から様々な値を計算して、その標本から算出した値から母集団の性質を分析するという推定・検定という分析手法があります。
このとき、標本の抽出が確率的に行われるため、標本の平均や標本の分散は確率変数となり、それぞれ確率変数や密度関数を持ちます。
最初に薬の例でいくと、新薬の効果を測る検査について、病院Aのデータの平均値は病院Bのデータの平均値とは異なっていて、各病院ごとのデータの平均や分散の値をそれぞれ標本平均、標本分散と呼び、これらの分布を、標本分布といいます。
母集団には「有限母集団」と「無限母集団」の2つがあります。
「有限母集団」とは、構成員の数が有限な分析対象集団であり、例としては日本の世帯全体などが挙げられます。
対して「無限母集団」とは、構成員または個体の数が無限な分析対象集団のことです。例えば、ある工場で作られる製品の不良品率を知りたいとき、母集団にあたるネジは次々と生産されているので実質無限と言えます。
そして調査の種類にも国勢調査などの母集団の構成要素全てについて調べる「全数調査」と標本 (母集団の中から選ばれる一部分の集まり) についてのみ調べることである「標本調査」の2種類があります。
母集団の性質を知るためには、国勢調査のような「全数調査」が行われることもありますが、基本的に全部調査するのは母集団が実質無限で出来なかったり、費用や手間暇が掛かるので「標本調査」を使うことが圧倒的に多いです。
ちなみに国勢調査も全数調査ですが、調査のための費用が大きいため、5 年に1度しか行われません。あとニュースでよく見る新聞社による世論調査は、標本調査によって行われています。
標本調査のためには、標本が母集団の性質を正しく代表するようなものでなければなりません。そのような標本抽出の方法として無作為抽出 (ランダムサンプリング) と呼ばれるものがあります。
スープの味見をするのに、よくかきまぜてから1匙すくって味見するような感じです。そして、無作為抽出により抽出された標本のことを「無作為標本」と言います。
これから説明していく推定・検定においては母集団と標本での用語や記号の違いを、しっかり理解しておくことが必要です。
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